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意識がゆっくり覚醒していく、身体が動かない、ここはどこ?、七海ちゃんはどうなったの?、身体にまだ力は入らず、目線だけを動かし状況を把握しようとする。
私はベッドに横になっていて、頭の横にはピッピッピッとなる機械とその側に点滴、そしてこの独特の匂い。
「ここは、病院?」
その後、私のところに看護師さんが来て、お医者さんが来て、意識がハッキリしているか、思考はちゃんとしているかなどの検査を受け、私がどうして病院にいるのかの説明を受けた。
私は一週間前、通勤中に通る工事現場の、クレーンで吊るされてた鉄材が、事故で私の上に降ってきたらしい。
緊急搬送された私は、心臓に鉄材が深く突き刺さっており、助かる見込みが無かったが、ちょうどドナー提供があり、心臓移植で助かったのだそうだ。
しかし事故があって、いきなりの状態でドナー、しかも心臓のドナー提供なんてそんなタイミングの良いことがあるだろうか?、先生に尋ねてみるも個人情報なので、決まりなのでと答えてはくれなかった。
その後私はリハビリをうけて、退院したのち、自分に起きた事故について調べる事にした。
「君嶋七海!?」
私の事故にはもう一人被害者が居た、その人は、鉄材で顔を抉られ搬送されたが、病院についてまもなく死亡してしまったらしい。
私はその人の名前を見て、胸が締め付けられる。
七海ちゃんは私と同じ事故にあって亡くなっていた。
私は確信した、この私の中で脈打つ心臓は、、、
「七海ちゃんの、、、」
私が病院で眠っていた時に過ごしたあの世界は、七海ちゃんと過ごしたあの世界は、夢でもなんでもなく、確かに存在した世界だったのだろう。
私はあの世界で、七海ちゃんと過ごして、いろいろ教えてもらって、笑いあって、、、
私は自分の胸に手を当てて思い出す。
「大丈夫だよ、早苗さん、私はずっとここにいるから」
あの世界で、七海ちゃんが最後に私にかけた言葉が、私の全身を駆け巡っていく。
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