Re:CUT

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 地下鉄の中、聖に携帯電話から連絡する法。  「もしもし」  「何してたの?」  「馬」  「何食べたの?」  「牛と米」  退屈な返事が聖から返ってくる。  「ねえ永遠を感じたことある?」  「ない」  「じゃあ宇宙は?」  「ある、かな」  「宙に浮いて寝るのと壁の中にズブズブッて入って寝るのとどっちがいい?」  「壁」  「えーアタシは宙に浮いて寝る、だけどな~」  プツリ・・・・・・  電話を切られてしまった。  クシュンと寂しそうな顔で携帯電話を見つめる法は少し気が立ってもいた。  その場で大きく伸びをする法。  そのほうの腕を掴んできた男がいた。  驚いた法は男の手を振りほどこうとするが男は法の手首を掴んだまま法の脇を凝視する。  「ちょやだ離して!誰かー」  法が大声で助けを呼ぶと別の車両から<駅員>が現れて、男を制した。  駅員に制された<名前不詳>は、逆向いた目を法から背けると、別の車両に姿を隠していった。  駅員が法を気遣うが法は握られていた側の手首をもう片方の手で庇うように名前不詳が隠れていった車両のほうから目が離せなかった。  目的地の地下鉄にて、法が歩いていく方向とは逆に地下道の障害者専用通路の上を、所狭しに一列に並んだ作業用の<人工知能の一群>が、剥き出しの骨格を露にしながら通り過ぎて行った。  駅に着くと、目的地に向かった。  昼下がりの、昼食時を過ぎたファミリーレストランに入った。  <ウェイトレス>が注文を聞きに法のもとに来て尋ねた。  法から目を逸らさず、しかし決して冷水器から水をコップに注いでいる手元は見ず、笑みを忘れず法に微笑みながら。  「注文がお決まりになりましたら、そちらのチャイムでお呼びください」  そう言い終えるとファミレスの受付付近に戻っていき、そこに留まった。  昼も過ぎているということもあってか、ファミレスの中は閑散としていて厨房から今だ、と言わんばかりに洗い物の音が法の耳にはしたなくも聞こえてくる。  窓の外の向こうで街行く人々の様子が法の目には残像のように見えた。  三食ちゃんとるよりも、こんな時間に気ままに、人目を気にせず競って急かして食事をとるよりも、一人気楽にゆっくりと流れる時間の中で取る食事のほうが法にはよっぽど健康に思えた。
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