Re:ect(エレクトーション)

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Re:ect(エレクトーション)

 レストランで食事を終えて法は人込みの街の中、進んでいく。  錆びれた裏路地では<ホームレスの男二人>が会話をしていた。  「この街の警察署の裏にヤクザの事務所がある」  「この世界の仕組みなんてそんなものさ」  裏路地を抜けると昔、日焼けサロンだった、今はホームレスのシェルターになっている宿泊施設の一階。  狭い階段を上って法は二階に向かう。  階段の壁は両手を広げるには狭くギシギシと狭苦しさを感じる。  二階の受付にたどり着くと、受付にはヒッピー調の男が座っていた。  法はホッっと飛び出し男の前に姿を現した。  男はキョトンとして法を懐疑の目で見た。  「なんだオマエ?」  男にそう言われた法は男に問いかけた。  「ウチウチ、<工(たくみ)>何年ぶりだっけ?」  テーブルを叩き、工、と言われた男は起き上がると法に力任せに声をかけた。  「オマ、法か?!いや久し振りだな、元気か?」  「元気よ、工も元気だった?」  喜んだ工は力加減する様子もなく法の背中をガシガシと抱擁とういう名目で叩いた。  「イタタタタ、痛いって工」  目をぎらつかせて工は久しぶりの再会に興奮の様子を隠すことなく法に迫った。  「ハハハ悪かったな、それよりもあの頃からオマエと仲良くしてたあの男、名前なんだっけ?」  「聖よ、幼馴染みの名前なんで忘れるかな」  「そうそう、そのシュウ」  「聖よ、今一緒に住んでる。あの、これなんだけど」  取り出したのは法が大切にしている写真だった。  工に手渡した。  「なんだこれ?フィルムアートかなんかか?」  モジモジしながら法がこたえた。  「これ貼っておいて欲しいんだけど、いいかな」  工はそう言った法の言葉の次には、もう行動に移していた。  「貸せ、これこの後ろのコルクボードに貼り付けておいてやる」  「ありがとう工!」  「十枚ぐらいよこせ、受付の小物入れに入れとけば誰かの目に届くだろ?」  「工マジサンキュ!」  にかっと笑った工の姿にその昔、法は惚れていたのだが・・・・・・  「ぢゃあ次行くねヨロヨンキュース」ヨロシクに4649の数字を当てたヤンキー語が近年のギャル男語のシクヨロになって、今法が言った、ヨロヨンキュース=46493に一周回って言葉になっていった。そのうちの将来にはこの彼女や彼たちが大人になった頃には、ヨロヨクとか定着してそうな勢いだ。  背を向けて工の営む、ホームレスのシェルターから去っていく法。  背中越しの法に声をかける工。  「オイ!」  階段の途中でビクッと肩を揺らす法。  言葉を続けた工。  「オレたちの時代は!?」  こたえた法。  「ボクたち!アタシたちの時代は!わっわっわっわっ」  そう言いながら法は階段を下りていく。  法の姿が消えてなくなると工は引き出しから煙を取り出し、口に咥えると煙を吐き出し黄色い目をうかつかせた。
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