ラストレター

　わたしの下駄箱には、いつも手紙が入っている。

『今日も先生の授業、楽しみにしています』

　手紙といっても、それはただのメモ書きのような、短い文章。

『先生の教え方、じょうずですごく好きです』

　差出人の書かれていないその手紙をくれる人物のことは何もわからないけれど、とても歪(いびつ)な文字なのに、丁寧に一生懸命書いてくれていることが伝わって、なんだか心がくすぐったくなる。

『先生、いつもありがとう』

　誰だろう。どの子だろう。毎日毎日嬉しいな。

　たったひとこと、されどひとこと。わたしがこうして楽しく教諭人生を送ることができているのは、もしかしたらこの手紙のおかげなのかもしれない。