23人が本棚に入れています
本棚に追加
その後は終始、手紙のことで頭が支配され、教諭人生の中で最も酷い授業を終えたわたしは、項垂れたままに5年4組の教室を出た。
毎朝校庭の方からこっそり校舎入って、先生の下駄箱に嫌がらせの手紙入れてたんだよ。4月からずーっと。
バレたらやめよーと思ってたけど、全然バレる気配ないし。こっちもやめ時わかんなくなって困ってる。
ぐるぐると脳内を駆け巡るのは、つい先ほど聞かされた衝撃的な事実。
「はあ……」
嘆息しながら、複雑な感情で廊下を歩いていると、ふと床で寝そべる青いものが目に留まる。
「ハンカチ?」
おもむろにそれを拾ったわたしは癖からか、記名があるかどうかを確認した。
「高地一……ああ、用務員さんの」
高地一、それは高地さんのフルネーム。彼が時折このフロアにも掃除をしに来ていることは知っていた。「そんなこと生徒たちがしますから」と言っても、「手が空いてるんで気にしないでください」と言ってきかずに、廊下からこっそり授業風景を眺めたりもしていた。
掃除好きなのか子供好きなのか。たぶん後者だろうな、とわたしは思う。
最初のコメントを投稿しよう!