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小学校の先生になることは、子供の頃からの夢だった。しかし夢を叶えたら叶えたで、もちろん『壁』にもぶつかった。
「こら上村くん!廊下は走らないの!」
「うるせぇなぁー、急いでんだからしょうがねーだろっ」
「急いでいてもだめ!きちっと歩きなさい!」
「はいはいはいはいっ。朝からうっざ。だから先生は、いつまで経っても結婚できねーんだよっ」
「なんですって!?」
こういう時、わたしだって「うざい」と言ってやりたくなる。「私生活のことなんて、あなたに関係ないでしょ」と。しかし相手は児童なわけで、わたしは彼等に物事を教える立場である先生なわけで、変なことを口走ってしまうわけにはいかない。
「待ちなさい上村くん!ちょっとお話があります!」
「やっだね〜!」
「ああ、こら!だから走らないの!」
最近の『壁』は、この児童で間違いなし。今年度から担任を任された、5年4組の男の子。今まで悪い噂は然程聞かなかった彼だけれど、どうやらわたしとは馬が合わないらしく、クラス替えのあった4月から、やたらと牙を剥いてくる。
「いけません!上村くん!」
「うっさい!偉そうに命令すんな!先生なんて大っ嫌い!」
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