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「他にないの? 面白エピソード」
「お前の心は機械仕掛けか」
椎名くんが恨めしそうに、半分以下になった私の焼きそばパンを見つめる。
「……じゃあ、最後にとっておきの悲しいエピソードを紹介しよう。これは俺の女友達の話なんだが……」
椎名くんの声に耳を傾けながら、私は焼きそばパンをゆっくり味わう。
「女友達──仮にFとしよう。Fは、幻の焼きそばパンをゲットして一人で食べようとしていた」
おいおい。そのFって、藤川じゃないか?
どんな話になるのか楽しみじゃないか。
「その時、男友達のSがやってきて、『パンを半分こしよう』と言った。FはSに淡い恋心を持っていたのだが、パンを分け合うという行為が恥ずかしく思えて結局最後まで一人で食べてしまった」
おいおい。そのSって、椎名くんじゃないか?
淡い恋心って何だよ。
そんなもの私は持っていないからね!
まあ、創作としては面白い。
焼きそばパンのソースはパック牛乳とも相性がバッチリだ。
「ところが、その翌日。Sは遠くの町に引っ越ししてしまった」
私はズズッと音を立てて吸い込んでいたストローから唇を離した。
椎名くんは悲しそうな瞳で私を見つめていた。
「それが最後だったんだ。FがSに告白するチャンスは永遠に失われてしまった」
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