椎名くんは譲らない

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「あ」  突然、何かに気がついたような顔つきで、友達の椎名くんが呟いた。  いつもの平和な昼休み、私は購買部で人気の焼きそばパンをゲットした幸せを教室まで引きずってきたところだった。  この焼きそばパンの人気といったら半端ではなく、四時間目の授業が終わると同時に買いに行かなければ秒で売り切れると噂されているほどだ。  私もこの高校で二年間ずっと焼きそばパンをゲットしようと狙っていたけど、成功したのはこれで二回目。  ゲットできたら奇跡に近い幻のパン。椎名くんがそれに気づいたのは必然だったと言えるだろう。   「それ、買えたんだ」 「うん。ラス1。運よくゲットできてさー」 「焼きそばパンと言えば、知ってる? 藤川。うちの学校の七不思議」 「七不思議? そんなもん、うちの高校にあったっけ?」  焼きそばパンの袋を破こうとした私に、椎名くんは真顔で迫った。 「最後の焼きそばパンをゲットした人は、一番近くにいる人と必ずシェアしなくてはいけない。さもないと、恐ろしい不幸が襲いかかる」  何それ。聞いたことないんだけど。
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