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「…ナナエさあ、…あんたがそこまで馬鹿とは思わないけど」
そんな私を可哀想なものを見るような目で見て、マキちゃんが盛大なため息をついた。
「泣きたくなったらいつでも言いな。一緒に泣いてあげるから」
「マ、…マキちゃ―――んっ」
卯月をはさんでマキちゃんにヒシっとしがみついたら、
「もうかよ? 早いな」
「ははうええ~~~~」
頼りがいのあるマキちゃんは、ぷくぷくの頬っぺたを擦りつけてきた卯月と合わせて、両腕にまとめて抱きしめてくれた。
「この子、…卯月? 3歳の割には小さいけど、すごくもの分かりがいいね。なんかそれなりのお家で厳しくしつけられたんじゃないかなあ? とりあえず、警察に行方不明者届が出されてないかだけは確認しておいた方がいいよ」
マキちゃんの言葉に激しくうなずく。
穂月の言葉を信じて時代を超えたんだとしたら、彼らは数え年だし、男子の教育は今より相当厳しいものがあっただろう。
なんて。
穂月と卯月には何か事情があるんだろう。だけど、帰るべき場所があるのなら、そこに帰るのが一番いい。
大丈夫。ちゃんと分かっている。
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