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穂月はどこかの偉い若殿様だったのかもなあ、…
などという考えが頭を巡り、慌てて打ち消す。
信じてるじゃん、私。穂月の話。
すっかり洗脳されてますやん。
「…どうした、なえ? 俺に会いたくなった?」
脳内で横っ面を引っぱたいてその場を離れようとしたら、目ざとく私を見つけたらしい穂月が人波をかき分けて教室から出てきた。
「いやいやいや。どうしてるかな、と思っただけで、大丈夫だから早く戻って、…」
教室中の、なんなら廊下からも、至るところから鬼のように注目を浴びて、後退する私にはお構いなしに、
「…俺は会いたかった」
穂月が片腕でそっと私の頭を抱き寄せた。
一瞬、恐ろしいほどの沈黙が校舎を襲い、
「ぎゃあああ~~~」「うぎゃあああ~~~~」
「ふんぎゃあああああ~~~~~~~~」
窓ガラスが割れそうなほどの凄まじい絶叫がこだました。
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