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「…うおま、…―――っ」
ショックにショックが重なって正気に戻り、ともかくも人を呼ぼうと大声を上げかけると、
「…なえ。驚くのは分かるが俺は時を超えた。ここは冷えるから中で話そう」
至近距離の侍男に口元を塞がれ、上からのぞき込まれた。理知的な瞳が強い光を放つ。
あ、なんかこの人、思ってたより若いな。
そいで、ちょっとびっくりするほど美形だな。
訳が分からな過ぎてバグった私の頭はこの際どうでもいいような情報を入手し、しかしそれで、もしかしたら教え子かもしれない、という可能性を導き出した。
元生徒が子ども出来ちゃって路頭に迷って変な商売に手を出した挙句に切羽詰まって家まで来ちゃったのかな、と。
それでとりあえず抵抗を止めて、通報も一旦待って、こくこくと首を縦に振る。話し合う気もあるようだし。子どももいるし。で、
「早く開けろ」
なんか微妙に偉そうな若い男と足元にしがみついている二歳児くらいの子どもを致し方なく自宅に招き入れた。
キスされたことは、とりあえず忘れることにする。
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