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このキスを覚えてる。
そんなはず、あるわけないけど。
私を探る手のひらの温度も。絡め合わされた舌先の強さも。切羽詰まったように交わされる吐息も。絶え間なく注がれる甘い唇も。
知らないうちに刻み込まれてた細胞が、全力で叫んでいる。
欲しかった。ずっと。
このキスを待っていた。
溶けて。とろけて。
甘くて。深い。
気持ちいい。すごく。
お願い。もっと。
気づかないうちに自分から穂月に腕を伸ばし、舌を伸ばしてねだっていた。薄く翳った視界の中で、月を映して金色に光る穂月の瞳が私を射る。
「ふ、…俺のキスが好きなの、変わらないな」
色っぽさ全開で、穂月が自分の唇を舐める。
…穂月。
スキ、…
って、ちょっと待て―――――いっ
変わる、変わってる、大変身よっ!!
我に返った私に思いきり跳ね上げられて、穂月は尻もちをつきながら目をぱちくりさせた。
「あんた、さっきから何してくれてんの!? 私とあなたは今さっき会ったばかりの他人っ!! 真っ赤な他人!! これ以上私に触ったら追い出すからねっ!!」
危ない。危ない。
スキ、…じゃないよ。何してんの、私。
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