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僕は姉の結婚式には出ないことにした。体調が悪くなったふりをして、家に居させてもらうよう頼んだ。
顔色が悪い弟がその場にいたら姉も気を遣うだろうと両親に言うと、僕の嘘も見抜けない二人は残念だと言いながらも僕を残して家を出た。
きっと姉だけは見抜いていただろうけど、何も言われることはなかった。
家にいるのが僕一人きりになると、すぐに家を抜け出してその足で彫り師の元に向かった。
姉からの最後の命令を聞くつもりはなかった。申し訳ないとは思うけど、でもあの命令だけは聞くことができなかった。
僕は生涯、姉のものだ。きっと姉は僕を手放そうとしてくれたのだろうけど、僕はそんなの望んでいなかった。
僕はずっと姉の人形でいい。離れていてもずっと。だから彫るものは龍ではいけない。
「雪の結晶を彫ってください」
そうすればきっと、僕はずっと姉の人形でいられるだろうから。
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