夕暮れのバレンタイン(黄崎 side)

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ただ、ひとこと。黒井からの言葉が。……だから何だって言うんだよ。赤坂の帰る時間なんて…………。 蘇ってきたのは、あの年始の初詣のこと。参拝の時にオレが願ったことは……「素直になれますように」。いつもあいつに怒ってばかりで、バカにしてからかって、でもそんなオレを笑ってくれる。それが嬉しくて……でも悔しかった。黒井や橙堂みたいに真っ直ぐな人間になりたかった。 そしておみくじで言われたのが“今年は貴方が最高に成長する1年。恋愛面でも素敵な相手と結ばれるでしょう。変に強がらず素直な貴方でいることが大切。”だった。やっぱりオレは……素直になりたい……! 『あんまり深く考えすぎずに、その時誰と一緒にいたいかで決めたらいいんじゃないかな』 オレの直感。「今すぐ赤坂(あいつ)に会いたい」―― 「悪いっ、ちょっとオレ帰るわ」 「えぇっ、どうしたんだよ!?」 「え〜、黄崎くん帰っちゃうの〜?」 「すまん、さっきなるみんから電話がかかってきて。『お前の成績が酷すぎて留年の危機だから、今すぐ面談しに学校に戻れ』ってさ」 「留年の危機!?お前そんなにやばいのか?」 「そうなんだよ。流石に留年はまずいからちょっくら学校行ってくるわ!じゃあな!」 早口でまくしたてて、オレはファミレスを後にした。学校とは正反対の道を猛スピードで駆け出した。
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