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目線が下がる。やっぱり男が男にチョコをあげるなんて不自然だったかな……。でも、ここで引き下がりたくない。もう一度顔を上げ、赤坂を凝視する。やがてやつは丸くさせた目をゆっくりと細め、チョコを受け取った。
「ありがとう……嬉しい」
まるでゲームでも買ってもらったガキのように、無邪気な笑顔で。夕日に負けないくらい眩しくて、ムカつくけどずっと見ていたいような。オレの心ごと奪ってしまった。
照れくさくなって、オレは立ち上がって橋の上からホームを覗いた。もう赤坂が乗ろうとした電車はとっくに出発してしまい、静かな夕方になっていた。赤坂もつられてオレの隣に佇む。
「ホワイトデーにちゃんとお返しするから」
「っ、別にそんなのなくたっていいしっ」
「強がるなよ。なぁ黄崎、今年は何個チョコをもらったんだ?」
「あ?知らねーけど10個くらいじゃね?まだ数えてねぇわ」
「10個!?お前は流石だな」
そう言って隣で赤坂が笑う。数が多ければいいわけじゃない。オレは……お前といられるならそれだけで……。
「黄崎ってさ、彼女から何かもらったり、逆に渡したりしてた?」
「は?いきなり何聞いてんだよ。今彼女いねぇつっただろ?」
「今じゃなくても昔だよ。どんなものをプレゼントしたりしてたのかなって」
真顔で尋ねられる。何だこいつ……そんな話聞きたいか?もういつの話だか思い出せないくらいなのに。
「……まあ、相手からはお揃いのキーホルダーとかもらってたかな。あとは剣道やってるからそのお守りとか。オレからは流行りのキャラのグッズや、アクセサリーとか」
「なるほどな。確かにもらって嬉しいものだし無難によさそう。それで、お前ってどんな人と付き合ってたんだ」
「ああ?どんな人って……色んなやつと付き合ってきたけど、大体派手な女だよ。ギャルとかちょっと不良みたいな」
「そっか。俺には縁のなさそうなタイプだな。それって、どっちから告白してた?」
「……っ、それも覚えてないくらいだけど……半々?というか、お互い遊びだったし、ノリとか流れで付き合ってばかりだったから、告白らしい告白なんてなかった」
赤坂は何でそんなこと聞いてくるんだ?今までオレの恋愛ごとなんてほとんど聞いてこなかったじゃねぇか。わけがわからなくなる。
「つか赤坂。そんなにオレの過去の恋愛なんて聞いてきて……お前も恋愛に目覚めたのか?」
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