夕暮れのバレンタイン(黄崎 side)

10/10
203人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
オレも黙って外を眺めていると、赤坂が小さな声を発した。 「黄崎は、彼女を作りたいとか思う?」 「……いや。少し前までは女と遊んでばかりだったし、中身のない交際をしてた。けど今は……そんなだらしないことはしたくない。そんなことしたって無意味だって。性格も正反対のお前と話すようになって、こういう穏やかな日々を過ごすことの楽しさを知った。だから……オレは彼女を作るよりも……お前といたい」 途中途切れながらも、オレは心の内を明かした。真面目に話す赤坂に、嘘はつきたくなかった。ホントにオレらしくなくて、オレをこんなふうにさせる赤坂が憎くて…………でもそばにいたい。視線を赤坂に向けると、やつもこっちを向いてやがて顔を傾げて笑みを浮かべた。 「ありがとう。俺も黄崎と話せるようになって嬉しい。全然キャラが違うのに、ここまで色んな話ができるって、案外俺達似てるところあるのかな?」 「いやねーな。オレは派手だけどお前は地味だし」 「即答するなよ。もうちょっとは考えろよ」 「だって全然浮かばねぇんだもん。部活も運動部と文化部だし、成績はオレがアホでお前は頭良くて。あ、でも中身はオレよりお前の方がアホか」 「なっ!?お前だって中身は人のこと言えてないだろっ!」 なんて言って、2人で笑った。電車の音にかき消されないくらい、バカみたいに笑う。何でこんな似てもないやつが、こんなにも頭から離れないんだろうな。 “素直になりたい”。今のオレにできる精一杯は、まだまだ素直とはほど遠いかもしれない。でも、少しずつでいいからお前と近づきたいんだ。 親友だけじゃ、足りないんだよ。オレはもっと、お前と一緒にいたい。 だからさ……もし、お前の好きなやつがオレだったら…………絶対にお前のこと幸せにしてやる。 『聞きたい、けど聞きたくない。 気になる、けど知りたくない。 今はまだ、このままでいたい。 2人で笑い合いたい。 でもね、いつかは手を繋ぎたい。 君の隣にいたいんだ。』
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!