ほのかな期待(橙堂 side)

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「彼は和臣といって、俺が昔付き合っていた恋人なんだ」 赤坂くんはどんな反応をするだろう?男同士で付き合っていたことに衝撃を受けるだろうか?少し怖い……けど、隠したくはなかった。 目を丸くさせた後、彼は満面の笑みを浮かべた。 「そ、そうなんですね!先生が男の人と付き合っていたなんて、意外でした!」 「あはは、そうだよね。あんまり知られてないからね。もし嫌な気持ちとかにさせてたらごめんね」 「えっ、嫌な気持ちなんてしてませんよ!むしろ先生のそういう話もっと聞きたいというか……。この和臣さんって方の絵、なんかずば抜けて上手いなって思ってたんですけど、なるほど、恋人だったからなんですね。どおりで感情のこもった絵なわけだ」 「そ、そんなに?恥ずかしいけどそれは嬉しいな。確かに描いてて楽しかったな」 「先生と和臣さんって、いつ頃お付き合いしてたんですか?」 俺の不安をよそに、赤坂くんは想像以上にいい反応をしてくれた。目を輝かせて俺と和臣のことを聞いてくる。今好きな人の前で、昔の恋人の話をする……何だか面白いな。 「えーっと、俺が28の時だから、今から10年くらい前だね。向こうは俺の2歳上で、5年間付き合ったんだ」 「なるほど。やっぱり出会いは絵の関係ですか?」 「うん。俺が個展を開いていた時に、お客さんとして来てくれたのが和臣だったんだ。俺の絵をたくさん買ってくれて、よく話す仲になって次第に惹かれていった……って感じかな」 「えええ、すっごくロマンチックで羨ましいです。好きな物で結ばれるのっていいですね。……ちなみに、どっちから告白したんですか?」 「えっ、俺の方からだよ。それまでは男性と付き合ったことなかったんだけど、今まで感じたことのない緊張感とか楽しさがあって、初めてこの人とずっと一緒にいたいと思えたんだ」 「わあぁ、先生の話何だか素敵です。先生、すごく大人でかっこいいからどんな恋愛をしてたんだろうって思ってたんですけど、今日初めて聞けました。和臣さんも先生と付き合えて幸せだったでしょうね。……って、すみません。根掘り葉掘り聞くような真似をして。ちょっと気になって」
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