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告白(赤坂 side)
あいつが好きだと自覚してから、嬉しくなったり悩んだりした。黄崎や橙堂先生からいいアドバイスをもらって、勇気が出た。そしてあの絵が返るって聞いて、俺の中で決心がついた。
「告白しよう」と。
先生に絵をもらい、優しい笑顔で応援してもらった。黄崎は叱咤激励してくれた。事前に2人には伝えておきたくて話したんだけど、すごく温かかった。本当にいい人に巡り会えた。2人には感謝してもしきれない。彼らのおかげで俺はここまでやって来れたんだ。
絵を抱えて、俺は別館2階の空き教室へ向かった。黄崎は何でこの場所にいるって知ってたんだろう?俺だったら思いつかない場所だな。そういう意味でもまた黄崎に助けてもらったよ。
人通りのない静かな廊下が、余計に緊張する。あいつ、いてくれるかな。告白する言葉も、何度考えてもいいものが浮かばなかった。もうありのままの自分でいよう。そう言い聞かせた。
目的地の前にたどり着き、立ち止まる。今、この扉の向こうにあいつがいるかもしれない。そう思うと口から飛び出しそうなほど心臓がドキドキと鳴り響く。ゆっくりと深呼吸をし、俺はドアに手を触れた。意を決して、そのドアを開けた。
目に映ったのは、しばらく使われていないであろう黒板や机。
そして、さらさらの銀髪をした小柄な男子生徒。彼は俺に気づくと、驚いたように目を見開いた。その濁りのない瞳すらも愛おしいと感じた。
「赤坂…………?」
「黒井。ここにいてよかった」
俺は教室に入ってドアを閉めると、1歩ずつ黒井に向かって歩みを進めた。もう何度も一緒に過ごしているのに、今日はやけに緊張している。この関係が、俺の告白で終わってしまうかもしれない……いや、そんなこと考えちゃだめだ。今はとにかく、黒井だけを見つめていよう。
「赤坂がここに来るなんて、びっくりしたよ」
「黄崎が教えてくれたんだ。お前がここにいるかもって」
「黄崎くんが…………」
どこか戸惑っている様子の黒井。そんな黒井に不安を感じながらも、それを払い除けて俺は絵を差し出した。
「今日、やっとこの絵が戻ってきたんだ」
「これ……展覧会の時の絵、だよね?」
「そう。これは、お前にあげるよ」
「えっ!?」
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