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永遠に(黒井 side)
僕は、目の前で起こっている事態を上手く把握できずにいた。夢を見ているのかと思っていた。
でも、夢じゃない。この緊張感も温かい匂いも……鮮明に僕を包み込んでいる。今、人生で1番胸がドキドキと鳴り響いている。
誰も来るはずのないこの場所に、赤坂が来てくれた。そして、あの絵をくれて…………僕を、好きだと……そう言ってくれた。
嬉しくて嬉しくて……死にそうになるくらい幸せで満ち溢れている。だって、僕だってずっと、赤坂のことが好きなんだもん。赤坂に好きな人がいるって聞いて、期待したり不安になったりした。僕も行動に出なきゃいけないと思って、終業式の日に告白しようと思っていた。その矢先のことだった。まさか、赤坂も僕を好きでいてくれたなんて……。信じられないけど嘘じゃない。今すぐ抱きしめたいくらい、僕も彼が大好きだ。
……だけど、同時に暗い気持ちが僕の中に浮かぶ。赤坂が僕を好きになってくれた。それは、黄崎くんと橙堂先生の恋が終わってしまうことになる。僕が赤坂からの告白をOKすれば、2人はきっと傷ついてしまう。最初は赤坂を勝ち取ることばかり考えていたけど、みんなと関わるうちにライバル同士で固い絆が深まっていった。
そんな2人を裏切ってしまうことになるんじゃないか……。そう思ってしまった。僕は、どうすればいいの…………?
「目を覚ますのです、凉音!」
「リオン……!」
真っ白で何もない空間が広がる。強い力で肩を掴むのは、もう1人の僕であるリオン。必死な顔で僕を見つめている。
「貴方は今、人生で最高の幸せを手に入れようとしているのです!ずっと夢に見ていた弓弦との時間が、叶おうとしているんです!その差し伸べられた手を掴むのは、貴方なんですよ!」
「……うん。僕は今までそのために闘ってきた。けど……黄崎くんや橙堂先生のことを思うと……っ」
「弓弦が選んだのは、紛れもなく貴方なんです!それを望んでいたのに自ら手放すことを……2人は望んでいるのでしょうか?」
「……っ!」
「もちろん、一切傷つかないことはないでしょう。しかし、弓弦が貴方との道を選んだ時点で、黄崎と橙堂ではなかったという事実に変わりはありません。貴方が自分の心に蓋をして弓弦のことを断ったところで、2人は余計に虚しさや悲しさを感じると思います」
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