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「なっ……!俺と結婚出来ないからとそのような嫌がらせを」
「リリアーナ様、酷いですぅ!」
「しっ、仕方ない!貴様との婚約を破棄する事だけはやめておいてやろう!分かってくれ、チェリー。これは国を守る為なんだ」
「ナシール殿下ぁ……でも私」
「勿論、本当に愛しているのは君だけだ」
目の前で突如として始まった寸劇に、ブチリと何かが切れる音がした。
「リリアーナ、仕方なッーー……ブハッ!!」
ナシールの体が僅かに宙に浮く。
拳が唸り、天高く伸びた。
ドサリという大きな音と共に、ナシールの体が地面に落ちた。
それと同時にチェリーもその場にへたり込む。
周囲が静まり返る中、後ろからパチパチと拍手が聞こえる。
勿論、国から連れて来た侍女と騎士達である。
侍女から受け取ったハンカチで手を拭った。
「随分と煩い口ですこと……不愉快だわ」
「………」
「さぁ、デクラン様……行きましょう?」
そう言って再び手を伸ばす。
推しへの下心が止まらない。
「は、はひぃっ!!」
自分も殴られると思ったのか、デクランは急いで手を握る。
(はっ……!!デクラン様の体温を感じるッ)
有り難みを噛み締めながら、学園を後にした。
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