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それに折角、皇女になったのだ。
この立場を利用せずにどうしろというのか。
デクランを推すのに持ってこいの環境、美貌、権力……。
全てを持ち合わせているリリアーナに恐ろしいものなどありはしない。
デクランは没落した貴族で血筋はいいが、恵まれない環境に居る。
引き取られた家では使用人のような扱いを受けている。
高貴な血筋故の美しい美貌を髪と眼鏡で隠しながら、独り立ちしようと直向きに頑張っている素晴らしい子なのだ。
そんなデクランをドロドロに甘やかして貢いであげたいと何度思ったことだろう。
そのチャンスが叶う今、遠慮などしていられない。
「婚約者……そうね、そうだったわね」
「………っ!」
「今から、わたくしが言う言葉をよく聞いて下さいませ」
「なっ、なんだよ!」
「殿下……!いい加減になさって下さいッ」
「煩い!なんだ、言ってみろよ!!」
馬鹿な王太子には現実を見てもらった方がいいだろう。
「………この婚約、破棄させて頂くわ」
「……!?」
「お待ち下さいッ!!リリアーナ殿下」
「どうか、っどうかそれだけは……!」
トレとダンテは凄い勢いで頭を下げている。
何も分かっていないナシールとチェリーはポカンとしている。
「お黙りになって?」
「……ッ」
「わたくし、もう貴方達に飽きてしまったの……国に帰らせて頂くわ」
「!!」
サァーッと血の気が引いていくのを他人のように見ていた。
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