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「お、お待ち下さい……っ」
「嫌ですわ」
「せ、せめて国王陛下の指示があるまでは……!」
「貴方の指図は受けないわ」
「……ッそんなつもりは」
「それに、わたくしは今すぐに帰りたいの」
ここにリリアーナを止められるものは誰も居ない。
「ああ、でもやる事がまだ残っていたわ」
「……ッ、何でしょうか!?」
「是非ッ、是非とも教えてください」
周囲もその様子を固唾を飲んで見守っている。
一度汗ばんでないか手のひらを握って開いてを繰り返した後、今まで話から置き去りにされていたデクランに向けて、そっと手を伸ばす。
「大丈夫ですか……?」
「「「「「!?」」」」」
まさか此処でデクランを気に掛けるとは思っていなかったのだろう。
話しかけてくる奴等のせいで、デクランにずっと土が付いていたことが許せなかったのだ。
「あ、あの……」
「さぁ、わたくしの手に掴まって」
「いけません……!リリアーナ殿下の綺麗な手が汚れてしまいます」
ーーードキューーン
この状況で、此方の手が汚れてしまう事を心配するデクランに心臓が撃ち抜かれた。
ゆるゆると首を横に振りながら戸惑う姿に、唇を噛んでニヤケそうになるのを抑えていた。
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