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ノエリアは重たい溜息を吐き出した。
ホールデンの一言で婚約者が変わるのであればノエリアは、こんなに苦労はしていない。
然るべき理由と順序を踏めば、ノエリアとの婚約を破棄出来なくはないのだろうが、困るのはノエリアではない。
(どう考えても現実的ではないわ‥)
「それにレイチェルの飲み物に毒を入れたそうじゃないか!!」
「毒‥?」
「もしレイチェルが命を落としていたらどうするつもりだったのだんだ!!」
「いつの話でしょう?」
「昨日だ!」
昨日、レイチェルが元気に夕食を食べているのを見たのだが、それはノエリアの見た幻だろうか?
よくここまで堂々と嘘を吐けたものだ。
(何もかもが穴だらけね)
それにノエリアもホールデンも幼い頃から毒に慣らされている。
少しの毒でも体が震えたり発熱したり嘔吐したり‥その苦しさを知っている筈のホールデンならば、昨日毒物を摂取して、男性に寄り添い泣きながら立つ事などできないという事は考えつきそうなものだが。
そしてレイチェルは国王であるハワードが隣国に政務に行っている間ならば、ノエリアから王太子の婚約者の座を奪えると思っているのだろうが、それは限りなく不可能といえるだろう。
(あの女‥‥ドロシーの入れ知恵かしら)
最初からドロシーがノエリアに敵意を向けている事は分かっていた。
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