ガラス

1/1
前へ
/29ページ
次へ

ガラス

散らばったガラスが映しているものは 内面にあった名残かもしれないと その時に思ったが、 ただ先に続いている感覚に 苛まれていた時のことを思い出して カフェの中で飲むコーヒーが 手元の書類を鈍く照らしている 歩いている人の中に探す面影は 死んでしまったあの人だったかもしれない 全てが弾けて飛んでいく夜 花火は無数の閃光を散らしていた 束の間、全てが終わるような気がした あなたのことが嫌いだったけれど 時々、思い出すことがあった 失われた風景を描いているような気がして 誰もいない夜道を歩いて帰る 脳裏に浮かぶガラス片が ふいにアスファルトの道にあるような気がして しゃがみ込めば、光を反射している 空は分厚い雲に覆われていた 幽霊のように移ろっていく影が 道路を自動車が通り過ぎていく 何かが終わる気がした 理由はわからないけれど ただ川の水の流れを見ていると いつかの記憶が浮上する 風に飲まれて、旋律を思い出せば 暗闇の中を進んでいく 部屋の中で、煙草を吸うと 棚にはグラスが置かれていた
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加