記憶

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記憶

そこにいたのは幽霊で 画面越しに映るあの人も 太陽の影みたいだった 外を眺め続ければ 苛まれた色は透明になっていく 気が付けばそんな風景が ずっと続いているので もう取り残された壁の中を 白く覆っているのは いつかのペンキみたいだった 段々と変わっていく 感覚が散らばって いつかの視線を見ている 些細なものだったのに いつも、語り続ける それが、知ることのない世界で 描こうとすれば、上手くいかず だけれど、別に離れていくこともない 手紙は誰に向かって書いたのか 今ではわからずに 引き出しの奥にある 光に包まれた記憶の中を歩く想像は どこかへ追いやられていくみたいな 不思議な感じでもなく 訪れた静寂に アルコールの酔いを感じる 結局、全てが離れていって もう町の中には 自然が咲き誇るばかり 空を見たのはいつだったか 季節は変わっていた
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