雨の部屋

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雨の部屋

雨がただ降り続いた いつかの幻影のように 景色は蜃気楼のように揺れているように感じる わからないことが増えていく 段々と消失していく意識が 雨の旋律と共に移ろっていく 庭の木々の葉は風に揺れ、雨に濡れていた 窓に伝う水滴が 十年前の記憶を呼び起こす いったい全ては何だったのだろう 今となっては何もない気がした 誰かが死んでいく テレビに映る画面が伝えることは ただ平穏に見える山の風景に 懐かしさが続いていて いつかの病室で見た 紅葉が浮上する 元々何もなかったから いつしかわからなくなっていく 疲れ果てた感覚に 淡い憂鬱に扉を叩く音が続く あの人は今どこにいるのだろう アパートから見る雨の風景を 今は共有したかった いつかの問題用紙は 空欄のまま 時間だけが過ぎていき その中に何かの意味はあるのだろうか 漂う煙は 吸っていた煙草から流れていく
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