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いつかのピアノ音が虚しく響いているので 水面から顔を上げて、風景を見つめる そこにいたのは友人だった 病院に見舞いに行った時、目が死を連想させた 結局、それが最後に見た姿だった 奇妙な時計の中で 魂がその中を彷徨っている 願いは沈黙の中を通り過ぎて どこかへ消えていく 祈りは空虚な絵を描いて 気が付くと暗闇の中には誰もいなかった 最初からそうだったのかもしれない パズルのピースはなくなっていた その中で無秩序に揺らめいているものが いつかの記憶と共に浮上する 無くしたものは世界の中で 当たり前のように存在していた だから、それは霧散していった 光の中に見たものは 悲しいから目を閉じていた 透明になるにつれて いつかの映像が蘇る だって、そうじゃなきゃ、こんな風に見つからない ただ流れていく空間が持続して 扉を叩き続けるのは誰だったのか 今となっては思い出せず 時間が静かに揺れていた だから、全ては否定されるのだ 空虚さを肯定するための 静かな鎖として
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