夕暮れ

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夕暮れ

漂う世界の鏡に 似せて作った幻想が揺らめいている 今は八月の夜で 吸った煙草が灰皿の中で燃えていた 時間は過ぎていく いつかあなたと見た景色は この瞬間を描いている 誰だったのか 今でも思い出せないから ただ言葉を書き連ねた その意味もわからずに 蘇る不安が 閃いて膨張する あの日閉ざした影が 際限なく浮上する また失われて戻ってきたのか それすらわからずに あなたが消えていったのは 真夏のことだったから ただ見ていることしかできなかった 消えていく空に 祈っていたのは 誰かの静寂だった また通り過ぎていく 景色の中に面影を探す 今も視界から消えていく 夕日のような線路に導かれて 彩るのはどんな宇宙か きっと響き続けるだろう
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