第9話 終わりの始まりをここから

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「…………承知した、救世主」 ユラシルは怪物に向き直る。手の震えがスカイリベルに伝わり、凄まじい力を吹き上げる刃が怪物に向けられた。 「お前、名前はあるのか」 「フシクス。吾輩も知っておきたい、『終局』を殺してくれた我が恩人の名を」 「ユラシル・リーバック」 「ユラシル……フッフッ、喰い甲斐がありそうだ」 邪悪な笑みを浮かべる怪物フシクスと怒りを露にするユラシル。 空気が張り詰める。 二人の中央部でぶつかる『ワールド』が火花を散らして押し合う。 (あの野郎……俺との戦いは手を抜いてたのか。とんでもねえ……別世界の俺とはいえ、こ、こんな人間が存在するなんて…) さぁ、始まる。 最早人間には到底計り知れない異次元の領域に立つ者たちの戦いが。 「うゥおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」 ユラシルとフシクスが同時に動いた。ユラシルは咆哮を上げた後に駆け、フシクスは滑空しながら距離を詰め、そして───ゴギャアアアッッ!!!とユラシルの刃とフシクスの右腕が互いの正面で激突し、球状の衝撃波が吹き荒れ大地を抉り飛ばした。 「ッッ!?」 力勝負はユラシルの勝ち。弾き飛ばされたフシクスは目を見開くが笑みは消さず、しかし直後、笑みごとフシクスを薙ぎ払う超巨大な三日月が放たれフシクスが斜めに両断される。 だが束の間で、フシクスはすぐに切断面を何事も無かったように繋げてしまう。 「ッ後ろだな!!」 瞬時に背後に移動していたユラシルの一撃を翼で受け流し、振り向き様に右掌から光を噴射。ユラシルを丸飲みにする特大の一撃が上空で弾け、直撃の手応えにフシクスは左足を振り回す。
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