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「───へ~、そういうことだったのか。面白えこと知れた」
男は一人、歴代の国王たちが綴り引き継がれてきた手記を片手に持ちながらニヤリと笑う。
「王族しか知り得ない世界の秘密。未来を変えた『開拓者』の存在………素晴らしい物語だった」
王族しか見ることを許されていない品を無断で読み、そしてぞんざいに空中に放り捨て───バラバラに切り裂いた。
「けどよ、知っちまった今でも俺の考えはちっとも揺れずに変わんなかったわ」
抜いた剣を鞘に収め、男は悠然と歩き出す。
その歩みに迷いは無い。後悔も罪悪感も、生憎芽生えることは無かった。
「すまねえな、あんたが守ってくれた世界は俺がブッ壊す。もし運命ってのがあるんなら是非ともお会いしたいモンだ」
───血にまみれた王の間。
───無惨に転がされたいくつもの死体。
男の歩みは何物にも妨げられない。血溜まりを踏み越え、死体を踏みつけ、ただただ自分の道を進んでいく。
「もう誰にもこの俺を止めることは出来ない。もしそんな奴がいるとしたらあんただけだぜ、人類史上最強の『開拓者』」
男は微笑む。
返り血で汚れた顔は、澄みきった笑みと共にこう言った。
「───歓迎するぜ、ユラシル・リーバック」
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