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「───ブハァ!!ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ…!」
激しく息を切らすユラシル。理由は体力消費を上回る集中からの疲弊。
拳を用いず体当たりで、接触時に肩に『ワールド』を流し込んで成立するこの一撃は超近距離、密着に等しい間合い且つ正しい姿勢からでなければ完成せず、何より乗せるべき感情が他の技の比ではないほどに難しい最高難易度の物。
愛情の【紅修羅】。
慈悲の【蒼観音】。
厚意の【緑菩薩】。
称賛の【黄弥勒】。
そして、憤怒の【漆般若】。
何故、怒りが最も難易度が高いのか。それは戦いの中で無くとも理由は変わらず、怒りには必ず不純物が混じるからである。
憎しみ、殺意、焦燥や不満、嫉妬などが少なからず混じってしまい、怒りの感情を形成する起爆剤は状況によって様々だ。
純度百パーセントの怒りを発露させるのは生半可ではない。他四つの感情はそれのみに意識を注げば成立し、単純と思われがちな怒りが最も難しい。こればかりは過去に生まれ、この技術を習得したとある少女でも最後まで使えなかったほどに。
使えたのはユラシルの師匠のみ。
今、この時までは。
「ハァ…ハァ……っまだやるかぁ!?」
「……………もう動けねえよ、クソ野郎…」
手足を投げ出して仰向けに寝そべる『終焉』は悔しげに呻いた。返答に満足したユラシルはへたりこむ。
「俺たちの根底にある違いは…師匠がいたかどうかだ」
「……何…?」
「師匠の存在があったから俺はこうなった。でもお前は師匠に出会えなかった……その理由は俺が原因だ」
ユラシルは深く息を吐いてから空を見上げ、遠い目で『終焉』に言う。
「お前がそんな風になっちまったのはお前から師匠を奪っちまった俺のせい……この世界は、俺が原因でこうなっちまったのさ」
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