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ただし、
「…て…テメェ……それ、何を持ってやがる…!?」
───息を飲んだのは怪物にではない。
怪物が持っているある物。
角度の問題でユラシルには見えなかったそれ。
「ん?ああ、話に夢中ですっかり忘れていたな。まだ食事の途中だったんだ」
「…食事、だとッ…!?」
「………何を言ってやがる。お前、何を持って…………………………っ」
ユラシルが絶句するほどの衝撃的な物。
マリーラの頭部だった。
「お前」
ユラシルの反応で察した怪物はニタリと笑い、空色の髪を掴んだまま頭上に持ち上げる。
「お前ッ…」
ピシッ、と口角が首まで裂け、人間の可動域では決してあり得ないほど大きく口を開けて───丸飲み。
「再生しいつまでも食える最高の食材だったよ。だがさすがに飽きてきたのでな」
人間の頭部を飲み込み膨らんだ腹は一瞬にして戻った。一瞬でだ。つまり、一瞬で消化し吸収して血肉に変えた。
完全に、マリーラという人間は消えた。
「それに、吾輩のメインディッシュは別にある。あの人間のメス一匹で腹を満たすつもりもないからさっさと食ってここへ来たんだ」
怪物はこの場にいる全員を一瞥し、目を向けられた者たちが総毛立つ。敵視ではなく餌として見られているという初めての感覚に震える者もいた。
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