85人が本棚に入れています
本棚に追加
/281ページ
「………にわかには信じられなかった」
ユラシルの変化を目の当たりにした怪物が他の生物に畏怖の念を抱いたのは恐らく初めてのことだろう。
「『終局』が死滅した今の世界に吾輩の他に奴の力を持っている生物がいるはずがない……いたとしても『八類王』の生き残りだと思っていた。だが貴様は、人間でありながら……」
「誇っていいぞ。ここまでブチ殺したいと心の底から思ったのは『終局』に続いてお前が二人目だ」
「まさかこれほどとは……忌々しい『終局』を殺したとは到底思えん程度が、しかし素晴らしい力だな」
翼を使って緩やかに立ち上がった怪物は無傷。ユラシルの【黒閻魔】で顔面が潰れたはずなのに傷一つ無い。再生速度はマリーラを優に凌ぐと見れる。『ワールド』なんて使わず自身に備わった治癒能力。
「実際俺だけで殺したんじゃねえ。けど、お前くらいなら十分俺だけで殺せる」
「本気で言っているのか?この吾輩を殺せると」
「殺すさ。お前はマリーラだけじゃない……アリッシュ、リュード、ネイフィーも殺してるんだ。あいつらの敵を討つために俺が殺す───それが、俺がこの世界でやらなきゃいけない最後の役目だからな」
願ってもないチャンスが訪れた。
歯痒かった。かつての仲間たちが命を捨ててまで封印する羽目になり、マリーラは長年屈辱と後悔に苦しめられていたことが。
「お前はどうあっても許さねえ……」
ユラシルは左手を倒れて動けない『終焉』に向け『ワールド』で包み込み、立ち尽くしていたミラへ投げ飛ばす。
「ミラはそいつを頼む!!シービスとフレスとグリーバはミラたちを守ってろ、助太刀は考えなくていい!!」
「……敵の俺が貴様の命令に従うと思うか?」
「従え。拒否の言葉を吐いたらその瞬間にお前を先に殺す」
最初のコメントを投稿しよう!