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振り抜いた時には太股から先は無くて。
足を掴み、剣を振るった状態で浮かぶ無傷のユラシルがそこにいた。
「ナメてんのかお前。こんなカスみてぇな攻撃で俺を殺れると思ってんじゃねえぞ」
言い切る時にはユラシルの前蹴りがフシクスの胴体にめり込んでいた。目を剥き息を詰まらせるフシクスを蹴飛ばし、切断した足を放り捨てながら軽く一振りしてフシクスの首を経つ。
絶命間違いなしだろうが、もちろんわかっている。この程度では死なないことくらい。
「…ふむ、殺せはせずとも、と思っていたんだがな。認識を改めなくてはならんことは今のでわかった」
落ちる前に頭部が引っ付く。それを見た時には失った足も元通りだった。
「その方がいいぜ。テメェは簡単には殺さねえ、あいつらが感じた以上の絶望を……………いや、これじゃ"あのクソ野郎"と同じだな」
頭を振って考えを捨て、同じヘマはしないために方針を変える。
「あのクソ野郎は俺を絶望させたいがために俺に負けた。同じことをやってちゃバカを見ることになっちまう───つーわけで、待った無しだ」
「その方がいいだろう、貴様のためにもな」
「………」
僅かに眉が動き、それを見逃さなかったフシクスは笑みとともに急上昇。ユラシルも直ぐ様追いかけ、追い付き、ぶつかる。
「……あのバケモンの台詞は…その通りだ」
遥か高い場所で衝撃波と閃光、爆音が連続させて雲を消し飛ばす光景を地上から見ていた者たちは言葉を発した男を見る。
今までユラシルと戦っていた『終焉』である。彼だからこそ、彼しかわからないユラシルの状況を戦っている姿を見据えながら続けて口を動かした。
「力を出し惜しみしてたのは間違いないだろうが、それでもあいつは俺との戦いで消耗してた。『ワールド』は全快して体の怪我は治っても体力や精神力は回復しねえ。今はあのバケモンへの怒りや殺意で精神力を支えてるが、体力は興奮状態でアドレナリンが出てるだけ……そんなモン、長くは保たねえ」
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