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「でもこれでゆっくり話をする機会は無くなったわよユラシル。もう私たちは容赦しない───ここであんたを殺すわ」
「ヒューおっかないおっかない。でも殺されるわけにはいかねえ、お前らのプライドを砕いちまうことになっても俺にはやんなきゃなんねーことが出来たからよ───悪いが多少は我慢してくれや」
この世界の全容はまだ見えない。予想すら出来ない。
それでもやらなければならないことは明白だ。
清算するんだ。
ユラシル自身で───確実にこの世界に生きているもう一人のユラシルを止める形で。
◆
「おーう、帰ったぞオメーら~」
「マジで生きて帰って来やがったかボス。エマリエーカはどんな形だ?」
潜伏している隠れ家に戻った男は、酒瓶を揺らす大柄な男と会話をしながら頭から羽織っていた紫色のローブを脱ぎ椅子の背もたれに放り投げてぞんざいにかけた。
「騎士長に『セブンナイト』、そんで国王はしっかり始末してきた。これでエマリエーカ王国は終わりだな」
「生まれ育った故郷を壊したご感想は?」
問いかけてきた女は意地悪な笑みを浮かべている。
「それがビックリ、なんにも感じなかったわ。顔見知りの国王や騎士連中を斬ってもちっとも罪悪感が湧かなかったから、俺も堕ちるトコまで堕ちたってこったな~」
「お話のところ失礼、ボス。返り血を拭ってはいかがかな?その汚れ様は見るに耐えますので」
姿勢正しく椅子に腰かける男は手鏡で自分の長い髪を櫛で解きながら言ってくる。
「相変わらず潔癖だなお前。そんな汚れてねーだろ」
「ご自身の目で確かめてくだされ」
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