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男が持っていた手鏡を向ける。そこに映った姿は思いの外汚れていて、洗い流す必要があるほどだった。
………だが、男は鏡を見た瞬間硬直してしまった。
「ボス?」
「………自分の顔を見るなんて十年以上やってなかったからすっかり忘れてた……そうか、ハハッ!そうかそうか!!」
男の様子に仲間たちが怪訝な顔をした。
「アッハハハハハハハ!!お前ら、これからだぜ本番は!気合い入れなきゃ皆殺しにされちまう!!」
「な、何言ってんだ…?どうしたんだ急に…」
大柄な男を無視し高笑いを響かせる男は言う。
この運命を心の底から歓迎する。
「戻って来やがったぜ、未来を救った大英雄───ユラシル・リーバック様がなぁ」
血塗れのまま笑う男───ユラシル・リーバックは喜びに打ち震えていた。久方ぶりの高揚、胸の高鳴りに口元の笑みは抑えきれない。
近い将来必ず出会うことになる。
人類史上最強と呼ばれた男と。
前人未踏の究極へ到った男と。
◆
「───……こりゃあ一体…どういうわけだ…?」
剣を握り空中に浮かぶユラシルは絶句した。
正面に並ぶ親友たちが本気になっている……それは別にどうでもよくて、問題は、その姿だった。
「なんでお前らが───【極致開闢】を使えるんだッッ…!!?」
どれだけ教えても習得は叶わなかった。
『終局』戦で助けてくれた二人は『禊の園』という別世界で気の遠くなる時間の中にいたから習得出来たと言っていた。
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