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玄関でいつまでも立ち尽くしたままでいるわけにもいかず、紗良はとにかく二人を部屋の中へと案内した。
キッチン脇の四人がけのダイニングテーブルに着席すると、何とも言えない気まずい雰囲気になる。
静流の表情は暗く、石膏像のようにニコリとも笑わなかった。初対面なら普通少しくらい愛想を良くしようとするものだろうに。
「あの……」
「ええっと、こちら高遠静流さん。私と遼の大学時代の先輩だよ。元々は大手企業の会社員だったんだけど、今は退職して転職活動中なの」
遼とは、ほのかの夫のことだ。二人は同じ大学に通っていた頃からの恋人同士で八年に及ぶ交際期間を経て結婚に至った。
二人の大学の先輩ということは静流の年齢は三十歳前後だろうか。
「紗良は私と同郷で同じ女子高に通っていたんです。紗良はそのまま地元の大学に進学したんですけど、就職を機に上京して私とルームシェアするようになったんです」
ほのかは静流に紗良とルームシェアしていた経緯をざっくりと説明した。
「高遠さんね、転職先が決まったんだけどこれを機に新しい職場の近くに引っ越したいって思っていたらしくて……。紗良がルームシェアの相手を探しているって話したら立候補してくださったの」
「あのう……。高遠さんは私が女性だとご存知でしたよね?」
「……はい」
静流は小さく頷いた。はいと言われて益々不信感が募っていく。
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