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(ああ、そうか……)
紗良は静流に二年前の自分の姿を重ねた。あの時、紗良は当時付き合っていた彼氏と手酷い別れ方をして、これでもかと傷ついていた。
他人から傷つけられた記憶は、おいそれとは忘れることはできない。それでも紗良にはほのかがいた。ほのかがつきっきりで慰めてくれたおかげで、なんとかこうして立ち直ることができた。
今の静流はかつての紗良とよく似た状況なのかもしれない。
しかし、静流はたった一人でもがいている。
「高遠さん、お紅茶は好きですか?」
紗良がそう尋ねると、静流は面食らったように目を瞬かせた。
「……紅茶ですか?」
「好みの産地や、フレーバーはあります?」
「え、あ、いや……特には……」
「じゃあ、私の方で勝手に淹れますね」
紗良は椅子から立ち上がると、キッチンに入った。キッチンの吊り戸棚を開けると、そこには所狭しと紅茶の缶が並べられていた。
紗良は思いつくままに紅茶の缶を取り出し、作業台の上に置いた。
取り出した缶を見つめながら腕を組み、うーんと唸りながら思案する。
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