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(最近暑い日が続いていたから柑橘系の方がいいかな?渋みが少ない方が飲みやすいかも?あ、でも。それよりも……)
方針が決まると缶を開けティースプーンで茶葉を掬い取る。茶葉の配合は目分量だ。レシピを参照するときはちゃんと量るが普段は適当だ。
ガラスポットに茶葉を入れ、夏でも絶賛稼働中の電気ポットからお湯を注ぐ。
蒸らす時間はきっかり三分。砂時計をひっくり返す。単に時間を測るだけならキッチンタイマーでもいいけれど、砂が落ちるのを待つあのワクワクした気持ちを味わいたい。
あらかじめお湯で温めておいたカップに茶漉しをセットし、抽出が終わったお茶を注ぎ入れる。
(うん、良い色!!匂いもいい感じ……)
これで茶菓子でもあれば完璧なのだけれど、今はダイエット中で買い置きがない。残念。
トレーにカップを載せダイニングまで運ぶと、静流の目の前に置く。
「お待たせしました。どうぞ飲んでください」
「……いただきます」
静流は恐る恐るカップを手に取った。ふーふーと息を吹きかけると、ゆっくりとお茶を啜っていく。
「どうですか?」
「美味しい……です」
紗良は心の底から安堵した。紅茶を淹れることは紗良の唯一の趣味であり、生きがいだった。
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