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「ホームステイしてきなさい」
突如、母の口にした言葉に、鈴木宏大は言葉を失った。いくらなんでも突然過ぎないか、と反論するよりはやく、母は畳み掛けるようにして続けた。
「大丈夫よ。国内だし、県内だもの。旅費は全部出すわ」
「どういうことだよ。僕は一銭たりとも払わなくていいってこと?」
「ええ」
あっけらかんと言う母の言葉に、眉をひそめた。どういうことだ。
今まで5年間、ずっと家にこもって外に出なかった。数少ない外出時間も、そのほとんどが道楽の類で、まともな生活はしてこなかった。仕事もせず学業にも専念せず、ニート同然の暮らしを送ってきた。
母は、僕を厄介払いしたいのかも知れない。そんな考えが脳裏をよぎる。だが、次に告げられた一言は、宏大の予想を遥かに上回っていた。
「大丈夫よ。心配しなくても、ホームステイはたったの7時間だけだから」
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