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③
「おーい、アキ坊!」
僕を呼ぶ声が後ろから聞こえた。振り向くと、父さんだ。激しく手を振っている。
「なーにー! 父さん」
「じいちゃんが、見つかったぞー!」
ええ! 見つかったって。それじゃあ消えたんじゃなかったんだ。どこにいたの? 僕は父さんの方へ走っていった。
「じいちゃんな、となりの町の病院で入院していたよ。ちゃんと生きてて意識もしっかりしているそうだ。今から病院にいくから。アキ坊も来なさい」
「うん! いくいく。いくにきまってるよ」
父さんは、僕と母さんを車に乗せると隣町に向かってぶっ飛ばした。1時間ぐらい走ったと思う。そこは、大きな病院だった。駐車場も大きかった。父さんは、受付の人にじいちゃんのことを聞いた。受付の女の人はすました顔でじいちゃんのいる病室は『3階の308号室です』と教えてくれた。父さんはスタスタとエレベーターに。僕と母さんは走ってついていく。
3階308号室。父さんは、引き戸を開いた。
窓際のベッドにいるのは、じいちゃんだ! 座って窓の外を見ている。僕らが部屋に入ってきた物音で振り向いた。
「おお、みんな、すまんのお、やらかしちまったあ」
じいちゃんは、いつになく照れくさそうにそう言った。僕は、じいちゃんにとびついた。
「じいちゃん! 消えたんじゃなかったんだね。よかった! じいちゃん、消えるのはまだ早いよ」
僕は、布団に顔をうずめた。
じいちゃんは、僕の頭をなでながら、
「そうじゃな。わしは、立派な『ジェダイの騎士』ではないからのう。消えるようにこの世を去るのは無理じゃったな。実はな……」
海での出来事を話してくれた。
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