青春の旅立ち

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「おい、タケル!!」  改札を抜け、息をあげながら駆け寄る。ホームでひとり黄昏れているのは、俺の十年来の親友、タケルだった。 「サトシ……」 「お前、東京行くって本当かよ」  青春をずっと一緒に過ごした十年来の親友が旅立つことを知ったのは、ほんの数十分前だった。クラスメイトからふと聞かされなければ、二度と会えなくなっていただろう。 「……」 「なんで言ってくれなかったんだよッ! 親友じゃなかったのかよッ!!」 「親友だからこそ、言い辛かったんだよ……」 「お前……」  タケルは一呼吸いれると、椅子に立て掛けたギターケースを大事そうに叩いた。 「──俺、ミュージシャンになるんだ。東京で売れて、有名になって、いつかこの街でも知らない人が居ないくらいデカくなってやるんだ! ……だから、期待しててくれよ」  その目には強い闘志の炎が灯っている様に見えた。 「……あんまり待たせっと、怒るからな」  俺にできることは、結局見送ることだけだった。
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