子犬

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「花が咲いたら花見をしようか」  嫌だ。 「そうかそうか、お前も楽しみか」  僕の声はお爺さんには「にゃあ」と、しか聞こえない。言葉が通じないことをこれほどもどかしく感じたことはなかった。  幸せそうなお爺さんの上で、僕は一人戦慄している。暗い瞳と見つめ合いながら、謝り続ける。  ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい――。  僕は桜が嫌いだ。
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