めぐ

5

私は大したことはしようとしていない。父と同じ方法で復讐するだけだ。そう私は思っていた。でもそんなことはなかった。

彼女の腹部に包丁を刺した後、彼女は私を見て驚いたようにして私の名前を言った。私は手を止めた。すると彼女は早口で喋り出した。
『どうして……。私、あなたの顔を〈みどり〉で見て懐かしい感じがして、そこであなただって気づいたの。でも言えなかった。私があなたの母親だ、なんて。母親らしいことはしていないし、何より今更だよね。ごめんね……ごめんね……ごめんね──』
私は『母親』という単語を耳にして思わず包丁を抜いてしまった。そして彼女は生き絶えた。
でも不思議と涙は出なかった。

最期の言葉の意味は私に託されている。

私は仕事を早いうちに切り上げ、地元へ戻った。スポンサーには台風がこれからひどくなるので断念したと伝えた。

まず戸籍を調べる。母親の欄には確かに彼女の名前が書かれていた。
彼女の持っていた写真に映っていた父は恋人、夫だったのか。
私はさらに調べた。すると真実が見えてきた。
これが真相かは分からない。でも私は納得することができた。
そうこうしているうちに私は容疑者とされた。
私は覚悟を決めて出頭した。