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エピローグ1
それは四十年以上前の話。
私と彼は同じクラスの中学生だった。
私はおっとりしていてイジメの対象にされていた。
そんな中、彼は私を守ってくれた。妙に正義感の強い彼は私を放って置けなかったようだ。
その結果、次第に私に対するイジメは無くなっていった。
その後、私は彼を尊敬するようになった。
彼についていくため必死に勉強して同じ高校、大学に行った。
彼も次第に私に好意を持ってくれているようになった気がした。
そこで私が告白すると返事はOKだった。
まだ成人になってからすぐのことだった。
二年の交際を経て私たちは結婚した。
和気藹々とした夫婦生活はとても楽しかった。
私は数年後無事に第一子を出産した。
すると私は働くことをやめ、家事、育児は私がすることになった。
私はこうして男女の壁が出来ていくんだなと実感した。
──やっぱり働きたい。
私は自ら離婚を切り出した。彼は驚いていたが私のお願いを聞いてくれた。
もちろん私のわがままで言っているので後のことは彼に決めてもらった。その結果、子供は彼の元で育つこととなった。
でも彼は私のことを諦めきれず週に一度、私に会いにいくといった。
私は私の子が成長していくのが見れるのかと思っていたが彼は子供は連れてはこなかった。
別れる前に『さよなら』と言っておいて良かったと思った。
ある時から私は何かの気配を感じるようになっていた。ストーカーかと思い彼と会った時に軽くそのことを話した。彼は私のことを心配してくれた。
それから一年ほど経っただろうか。仕事の帰り道、後ろに気配を感じた私は思い切って振り返ってみた。すると刃物を持った人が私に向かってくるではないか。私は身構えた。
「危ないっ!」
その直後、私は誰かに倒され、土手を転げ落ちていった。
上を見るとそこには刺された彼の姿があった。
犯人は逃げ去っていった。
私は彼に駆け寄った。
『どうして?』
私が訊くと彼は、この場を離れろ、知らない土地へ。と言って私を逃がさせた。あれはきっと私が濡れ衣にならないようにした彼の優しさだろう。
私は和歌山へと移住した。
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