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「そうだなあ、夢を買ってるんだろうな。それに売上の一部は、公共の福祉に役立ってるみたいだし」
それは後付の理由……言い訳でしょ、と内心思いつつ、私は夫に釘をさした。
「まあ、楽しみの範囲なら良いけど、あまりのめり込まないでね」
「はいはい。……それで、外れたくじはどうしたの?」
「え? 捨てたわよ。何でそんなこと聞くの?」
「もったいない、まだごみ箱の中にあるよね? あとで回収しなきゃ」
何を言い出すんだろう、この人は。
訳がわからず、私は思わず目をぱちくりさせる。
そんな私に、夫はこう説明してくれた。
「毎年くじの日……九月四日に、外れくじの敗者復活抽選があるんだよ。結構豪華な商品が当たるんだ。だからそれまでは、捨てちゃだめなんだ」
ためだ、こりゃ。
私は夫に気づかれないようにため息をついた。
最後の宝くじは、もう一度日の目を見ることができるのだろうか……。
──終──
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