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アニメのキャラクターがデザインされたスクラッチくじが十枚、ちゃんと入っている。
早速私は財布から五百円玉を取り出すと、くじの銀色の部分を削ってみる。
なんだろう、初めてなのに懐かしい感じがする。
同時に罪悪感にも似た感情も湧き上がってくる。
そして、ふと私はいつになく熱中している自分自身に気がついた。
なるほど、行列ができるわけだ。
これは、ハマったら危険だ。
そう直感して、以後買うのはやめようと決意した。
十枚すべて削ってみたところ、出てきたのは末等が三枚。
見本に書いてあった通りの結果だった。
やっぱり日取りでそうそう簡単に当たるはずがない。
当たりくじの三枚を財布の中に入れると、私は外れた七枚をごみ箱へ捨てた。
※
夕食のとき、私は宝くじのことを夫に話した。
結局三枚しか当たらなかった、と言うと、彼は笑いながらこう言った。
「そりゃ、そう簡単に当たるはずないよ。一等なんて数えるほどしか入ってないんだし」
その言い草に、私は思わず頬を膨らます。
「なら、どうしてあなたは熱心に買ってるの?」
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