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桜が悪い、わけじゃない…
春
誰もが心弾む季節
クロッカス、ムスカリ、チューリップ、
水仙、そして桜…
色とりどりの花たちが咲き
明るい季節の到来を告げる
新しい息吹を感じる季節だ
桜の花びらが舞い散る中で
真新しいランドセルを背負った新一年生は、入学式へ向かう
新社会人となる者は、
期待と不安の中
新しい世界へ一歩を踏み出す
だけど…
ああ、またこの季節が来たんだ、と…
私だけは…、
一年前と同じ、
今日も部屋の天井を見ているだけ…
窓の外は、春爛漫で
庭の花桃の蕾が膨らみ、咲いて
桜の花びらの中を人が行き交っても…
私は、
その姿を家の中から眺めているだけ。
春は、いつまで経っても
私には、やって来ない…
去年も、一昨年も…
こうして、もう、何年経つだろう…?
数年前2月14日
春の気配はあるものの
まだ、道路や空き地には雪が残っていた。
この日は、
税務申告の相談日だった。
前日、
夜のうちに必要書類は確認しておいた。
明け方に目が覚めると、
何かおかしい。
自分の胸の鼓動が早いのが分かる。
動悸…?
そのうちに、
次第に息苦しさを感じ
落ち着かなければ、と思うのに
逆に呼吸が早くなってしまう…
いけない…このままじゃ、
過呼吸になる、
と頭では分かっても
身体をコントロール出来ない…
次第に身体の痛みが出て来て、
目眩も出てきたのか、
起き上がることさえ
できなくなってきた…
ああ、もう、無理…
近くにあるはずの鞄をたぐり寄せ、
携帯を取り出し、
119番を押した…
「き、きゅうきゅう、を、
おねがいします…」
それが、
自分で初めて呼んだ救急車だった。
隊員が到着した。
色々尋ねられても、
頭の中で言葉がまとまらず、
呼吸も苦しく、
息も絶え絶えで症状を訴えた。
急速に血圧低下していたようで、
隊員の「血圧、計れません」の声が聞こえた。
搬送先が決まり、
ようやく救急車が走り出す。
2月の道は轍でボコボコ、
車の揺れが激しく
病院までの時間が長く感じられた。
ようやく、病院に着くと、
様々な検査が始まった。
何度も血圧を計り、血液を採取、
心電図、レントゲン…
結局分かったのは、
肝機能の数値が高い、
ということだけ…
低血圧や動悸や吐き気など
様々な症状が何故起きているのかは、
わからないまま…
わからないと、当然治療もなく、
ただベッドの上で経過観察するだけ。
それでも、
昼過ぎ頃には
過呼吸や
それから来る身体の痛みもやわらぎ、
家に帰された。
翌週、
追加の検査を受けに行き
それから、
月に1度血液検査を受けに
通うようになる…
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