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多分8人だったと思う。
学生らしくみんなで花見をした。
花見と言っても公園でお菓子を広げて馬鹿みたいに遊ぶそれだけ。当時高校生でスマホではなく携帯の時代に集まるから、集まってやるのはスマホアプリゲームではなく、トランプとか。風に飛ばされながらやっていた。
その花見を主催したのは別の高校生に通う友達だった。
別に陽キャでもないから珍しかった。
しかし、小学、中学は同じでよく遊んでいた。高校が違うとなると少し疎遠になっていた。
その子と他にも友達と花見をした。
その日はよく晴れて、よく風が吹いて、でも満開前の桜はまだ散らなかった。
「来年もやろう。」
「うん、そうしよう。」
それを約束した。
でもその約束は叶っていない。
友人はこの世から去った。
僅かに2週間後の話だった。
珍しく家の電話が鳴った。
同じく小学校と中学校が同じの家の近くの友達。あまり中学校からは運動神経のいい彼とは違うグループで遊ぶようになっていた。
「おい、お前。○○○○って知ってるか?」
「うん、そりゃ知ってるよ。」
この間花見をしたくらいだ。
「…亡くなったらしいぞ。」
「……は?」
訳が分からなかった。
その後、葬式がちゃんと開かれた。沢山の同級生や友達が訪れていた。きっとそんなにかかわっていなかったような女子生徒も泣いていた。
棺の中で彼は眠っていた。
あの花見をしたときより髪はボサボサしてた気がする。顔は青いのは…当たり前。口元が一本の線が入るように僅かにだけ開いていた。
後から聞いた噂によれば、
彼はトイレの洗剤を大量に飲んでこうなったと。
彼はこの道を自分で「選んだ」。
不運ではない。
じゃあ彼は…いつ決心していたのか?
あの花見をしているときから?
分からない。
本当に分からない。
ドラマのような、物語のような、話はない。
「死ぬな」って情熱をかけることも、
「?」という違和感の一つも感じなかった。
それが察せない俺は友人ではないのか?
最後を決めていたから花見を誘ったか?
あの日俺はどうすれば正解だったのか?
彼は本当にトイレの洗剤を飲んだのか?
俺は何も分からないまま。
その答えは無いまま。
桜は散る。
でも、また桜が咲く。
果たせない約束と共に。
何も知らないままの自分を思い出させる様に。
桜は嫌いだ。
違う…。
本当は何も出来なった自分が…嫌いだ。
それを…思い出すから。
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