桜がピンクで何が悪い!

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桜がピンクで何が悪い!

「ふっざけんな!お前がピンクなせいだぞ!!」  それは、僕が幼稚園児だった頃の話。  その年の春は桜の開花がやや遅く、四月でもまだたくさんの花が咲いていた。年長組になった僕は園庭の桜に向かって、ぎゃーぎゃーと喚いたのだった。 「桜なんかだーいっきらいだ!お前がピンクじゃなかったらなあ、僕はバカにされないですんだんだぞーっ!!」  多分、周りの園児や先生の大半は思ったことだろう――突然何やってんだコイツ、と。大人になった今ならわかる。僕は超恥ずかしい行動をしていたと。  だって、完璧に八つ当たりだったのだから。  きっかけは、年長になって組分けが決まってからのことだった。幼稚園は、年長になるにつれクラスが増える傾向にある。理由は単純明快、年中や年長から幼稚園に入る子も少なくないからだ。僕は年少クラスからスタートしたが、同じ幼稚園の仲間には年中までどこにも通ってなかったという子もいたし、あるいは保育園に行っていたという子もいる。年少が一クラスしかないのに対して、年長だけは四クラスもあったのは必然と言うわけだ。  そんな僕達の幼稚園は、例に漏れずみんな花の名前がついていた。  年長クラスはそれぞれヒマワリ組、スズラン組、バラ組、サクラ組となっている。僕はスズラン組が良かったのだが(スズラン組のイメージカラーが青だったからだ。僕は青が好きだった)、割り当てられたのはサクラ組だったのだった。  で、思い切り絡まれた。誰にって、年少クラスの頃からのライバルみたいなやつに。 「やーいやーい!リーチお前、サクラ組でやんの!」  そいつはいわゆるガキ大将みたいなやつで、年長の時にはもう小学生に見えるくらい体が大きなやつだった。喧嘩が強くて乱暴、女子にわかりやすく嫌われるタイプ。で、昔からやたらと僕につっかかってきたのてある。  この時も、非常にしょうもない理由で絡まれたのだった。 「サクラ組つったらピンクじゃん!ピンクは女の色じゃん!お前やっぱ女だったんだな、女みたいな顔してるもんなー!」 「んだと!?もういっぺん言ってみろよ!」  その場で喧嘩のコングが鳴った。  悲しいけれど、僕は短気なわりに喧嘩が強くない。ていうか、そのガキ大将ことクウヤが強すぎた。  僕はその日もボコボコにされて、半泣きで先生に泣きつく羽目になったのである。
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